【令和8年度】パートを正社員にすると最大80万円|キャリアアップ助成金・正社員化コースの落とし穴

【令和8年度】パートを正社員にすると最大80万円|キャリアアップ助成金・正社員化コースの落とし穴

はじめに

10月1日から、千葉県の最低賃金は1,195円になり、社会保険の適用拡大も始まります。「非正規のまま働いてもらう前提が崩れてきた」と感じておられる経営者の方は多いのではないでしょうか。

そこで検討されるのが、パート・契約社員の正社員化です。国も後押ししており、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を使えば、中小企業では1人あたり最大80万円の助成を受けられる可能性があります。

ただし、この助成金には「先に正社員にしてしまうと、もう受け取れない」という決定的な落とし穴があります。本記事では、手続きの順番を中心に、押さえておきたいポイントを整理します。

なお、助成金の要件は毎年度見直されます。本記事は令和8年度(2026年度)の公開情報に基づく概要ですので、実際の申請にあたっては最新のパンフレットをご確認ください。

いくら受け取れるのか

正社員化コースの助成額は、転換前の雇用形態「重点支援対象者」に該当するかどうかで変わります。

転換の内容中小企業大企業
有期雇用 → 正社員(重点支援対象者)80万円60万円
有期雇用 → 正社員(上記以外)40万円30万円
無期雇用 → 正社員(重点支援対象者)40万円30万円
無期雇用 → 正社員(上記以外)20万円15万円

重点支援対象者の80万円は一度に振り込まれるわけではありません。転換後6か月で40万円、さらに6か月続けて40万円という2期に分けた支給です。1年がかりの制度とお考えください。

「重点支援対象者」とは

次のいずれかに当てはまる方が該当するとされています。

  • 雇入れから3年以上継続して雇用されている有期雇用労働者
  • 雇用期間が3年未満で、過去5年間の正規雇用期間が通算1年以下、かつ過去1年間に正規雇用されていない
  • 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した方 など

長く働いてくれているパートさんは、多くの場合1つ目に当てはまります。「うちの古株のパートさんこそ対象になりやすい」とご理解いただくとよいかと思います。

令和8年度からの加算

令和8年度からは、正社員転換等に関する所定の情報を自社サイトや職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で公表した場合の情報公表加算が新設されました。1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が上乗せされます。

ただし、公表はキャリアアップ計画期間中かつ支給申請日までに行い、少なくとも申請した事業年度の終了までは公表を続けることに同意する必要があるとされています。「申請前に公表を済ませておく」という順番にご注意ください。

なお、正社員化コースには従来から「正社員転換制度加算」「多様な正社員制度加算」もあり、これらとあわせた加算の合計は1事業所あたり最大80万円(大企業60万円)まで拡大しています。

最大の落とし穴:順番を間違えると1円も出ません

助成金でもっとも多い失敗が、「正社員にしてから申請しようとした」というケースです。この助成金は、転換する前に計画を出しておくことが絶対条件になっています。

正しい順番は次のとおりです。

順序やること注意点
キャリアアップ計画書を作成し、労働局へ提出転換日の前日までに提出が必要
就業規則等に正社員転換制度を規定転換の前に整備しておく
対象者を正社員に転換転換前に6か月以上の雇用実績が必要
転換後6か月分の賃金を支払うこの間の継続雇用が条件
1期目の支給申請6か月分の賃金支給日の翌日から2か月以内
さらに6か月分の賃金を支払い、2期目を申請同じく2か月以内

①と②を飛ばして③に進んでしまうと、後から取り返しがつきません。 「正社員にしたので助成金を申請したい」とご相談いただいても、お力になれないのはこのパターンです。正社員化をお考えなら、転換日を決める前にご相談ください。

つまずきやすい3つの要件

① 賃金を3%以上増やす必要があります

転換後6か月間の賃金が、転換前6か月間と比べて3%以上増額していることが求められます。

ここで見落としやすいのが、比較の対象に含めない賃金があるという点です。一般に、賞与・残業代・通勤手当などは比較から除かれ、基本給や定額で支払われる手当を中心に判定されます。「手当を足したから3%超えている」と思っていたら要件を満たしていなかった、という事故が起こりやすい部分です。

② 就業規則に「転換制度」が必要です

正社員転換制度そのものが就業規則等に定められていないと対象になりません。転換の手続き・要件・時期を規定しておく必要があります。10人未満の事業場で就業規則を作成していない場合も、労働局への届出が求められますので、早めの整備が欠かせません。

③ 対象にならない方がいます

  • あらかじめ正社員として雇用することを約束して採用した方
  • 新規学卒者で、雇入れの日から1年を経過していない方
  • 事業主や取締役の3親等以内の親族
  • 支給申請の時点で退職している方 など

「入社時から正社員登用を前提にしていた」ケースは対象外とされるのが一般的です。募集要項や雇用契約書の記載も確認しておきたいところです。

申請できる人数にも上限があります

正社員化コースの支給申請は、1事業所あたり1年度20人までとされています。多くの中小企業では上限に達することは少ないと思われますが、複数名をまとめて転換する場合は年度をまたぐ計画も検討の余地があります。

まとめ:着手前のチェックリスト

  • □ 正社員化を検討している対象者を洗い出したか
  • □ その方の雇入れからの年数を確認したか(3年以上なら重点支援対象者の可能性)
  • □ キャリアアップ計画書を転換日の前日までに提出する段取りになっているか
  • □ 就業規則等に正社員転換制度を規定しているか
  • □ 転換後の賃金が転換前より3%以上増える設計になっているか
  • □ 比較に含めない手当を除いても3%を満たすか検算したか
  • □ 対象外となる要件(親族・正社員採用の約束など)に該当しないか確認したか
  • □ 転換後6か月・12か月の申請時期をカレンダーに入れたか

助成金は、要件を満たしていれば受け取れる一方、手順を1つ誤ると取り返しがつかないという性質のものです。とくに正社員化コースは、計画書の提出タイミングが結果を左右します。

10月の最低賃金改定や社会保険の適用拡大をきっかけに正社員化をご検討でしたら、転換日を決める前にご相談いただくのが安全です。詳細はお気軽に当事務所までお問い合わせください。初回のご相談は無料で承っております。

制度の受け皿となる規程の整備については「[就業規則、最後に見直したのはいつですか?](https://sr.ld-partners.net/work-rules-checklist/)」もあわせてご覧ください。


※本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく概要です。助成金の要件・金額は年度途中でも変更される場合があり、予算の状況により受付が終了することもあります。申請にあたっては厚生労働省の最新のパンフレットおよび管轄の労働局にご確認ください。

社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳

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