就業規則、最後に見直したのはいつですか?|中小企業が点検すべき7つのポイント

就業規則、最後に見直したのはいつですか?|中小企業が点検すべき7つのポイント

はじめに

「就業規則ですか? 創業当時につくったものが、たしか金庫にあったと思います……」

顧問先の経営者の方とお話ししていると、こうしたやりとりは珍しくありません。就業規則は一度つくれば終わりのものと思われがちですが、実際には法改正のたびに手直しが必要な「生きた書類」です。

そして、いざ労務トラブルが起きたとき、会社の主張の根拠になるのは就業規則の記載です。内容が古いままだと、守ってくれるはずのものが機能しません。

本記事では、中小企業が優先的に点検すべきポイントを整理してお伝えします。

まず確認したい、就業規則の4つの義務

① 作成・届出の義務

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法89条)。

ここでの「10人」にはパート・アルバイトも含まれます。一方、派遣社員は派遣元でカウントされ、役員や業務委託の個人事業主は含まれないのが一般的です。また、事業場単位でのカウントである点にもご注意ください。本社と支店で分かれている場合、それぞれで判断します。

② 意見聴取の義務

作成・変更にあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見書を届出に添付する必要があります(労働基準法90条)。

なお、必要なのは「意見を聴くこと」であり、同意を得ることまでは求められていないと解されています。ただし、代表者の選出方法(挙手・投票など民主的な手続きによること)が問われるケースがありますので、選出の経緯を記録に残しておくことをおすすめします。

③ 周知の義務

就業規則は、従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります(労働基準法106条)。周知されていない就業規則は効力を認められないおそれがあります。金庫や社長の机の引き出しにしまったままになっていないか、この機会にご確認ください。

④ 記載事項

始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給、退職に関する事項(解雇の事由を含む)は、必ず記載しなければならない事項とされています。

従業員10人未満でも作成をおすすめする理由

10人未満の事業場に作成義務はありませんが、実務上は作成しておくメリットが大きいと考えられます。

  • 懲戒処分は、就業規則に定めがなければ行えないのが原則です
  • 休職制度も、就業規則に定めがなければ運用できません
  • 助成金の申請要件として、就業規則の整備が求められる場合があります
  • トラブル時に「ルールを定めていなかった」ことが会社の不利に働きやすくなります

「まだ数人だから」という段階でこそ、シンプルな内容で整えておくと後が楽になります。

直近の法改正で見直しが必要な7つのポイント

1. カスタマーハラスメント対策(2026年10月1日〜)

改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策が全事業主の義務となります。法律上、就業規則への記載が必須とはされていませんが、相談を理由とした不利益取扱いの禁止や、従業員側に問題があった場合の懲戒の根拠を整理する観点から、規程への反映が望ましいと考えられます。

2. 求職者等へのセクシュアルハラスメント対策(2026年10月1日〜)

同じく2026年10月から、いわゆる「就活セクハラ」への対策も義務化されます。採用活動を行うすべての企業が対象です。

3. 育児・介護休業法の改正(2025年4月・10月施行)

特に2025年10月施行分では、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻の変更・テレワーク・短時間勤務・休暇の付与などの選択肢から2つ以上を措置することが、企業規模を問わず義務づけられました。あわせて個別の周知・意向確認も求められています。

この対応が就業規則(育児・介護休業規程)に反映されているか、そして実際に運用されているかをご確認ください。制度が規程にあっても、対象者が知らなければ「実効性がない」と評価されかねません。

4. 65歳までの雇用確保措置

経過措置が2025年3月末で終了し、すべての企業で65歳までの雇用確保が完全義務化されました。定年後再雇用の取扱いが規程に明記されているか確認しましょう。

5. 賃金に関する記載

最低賃金は毎年改定されます(千葉県は2026年10月1日から1,195円)。賃金規程に具体的な金額を書いている場合、改定のたびに更新が必要です。

6. 労働時間・休暇の実態とのズレ

「規程では9時始業だが実際は8時半に始まっている」「有給の取得手続きが実態と違う」といったズレは、トラブル時に会社の不利に働きます。

7. テレワーク・副業への対応

コロナ禍以降に導入したまま、規程を整備していないケースが多く見られます。費用負担、労働時間の管理方法、副業の許可基準などを明文化しておくことをおすすめします。

見直しの際の注意点:不利益変更

就業規則の変更で労働条件を従業員にとって不利な内容に変える場合は、原則として労働者の合意が必要とされ、合意がない場合には変更内容の合理性が問われることになります(労働契約法9条・10条)。

手当の廃止、休職期間の短縮、退職金制度の変更などは、慎重な手続きが求められる典型例です。「一方的に変えて周知すれば済む」わけではない点にご注意ください。

まとめ:点検チェックリスト

  • □ 就業規則の最終改定日はいつか(3年以上前なら要見直し)
  • □ 労働基準監督署への届出は済んでいるか
  • □ 従業員がいつでも見られる状態になっているか
  • □ カスハラ・就活セクハラ対策を反映したか(2026年10月施行)
  • □ 育児・介護休業規程は2025年改正に対応しているか
  • □ 65歳までの雇用確保措置が明記されているか
  • □ 規程の内容と実際の運用にズレがないか
  • □ テレワーク・副業のルールを定めているか
  • □ 不利益変更にあたる箇所がないか確認したか

就業規則は、会社を守る道具であると同時に、従業員に「この会社のルールは明確だ」という安心を与えるものでもあります。トラブルが起きてから慌てて見直すのでは間に合わないのが、この分野の難しいところです。

自社の就業規則が現在の法令と実態に合っているか、一度点検してみませんか。作成・見直しから労働基準監督署への届出まで対応しております。詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料です。


※本記事は2026年8月30日時点の法令に基づいています。個別の事案については事情により判断が異なる場合がありますので、具体的な対応にあたっては専門家にご相談ください。

社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳

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