
はじめに
「問題のある社員に辞めてもらいたい。30日分の給料を払えば、明日から来なくていいと言えますか?」——こうしたご相談は少なくありません。
結論からいうと、解雇予告手当を払うことと、解雇が有効かどうかは別の問題です。解雇予告手当は「手続き」のルールであり、支払えば解雇が認められるわけではありません。
本記事では、解雇予告と解雇予告手当について、よくある質問をQ&A形式で整理します。
Q1. 解雇予告のルールを教えてください
労働基準法20条により、会社が労働者を解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
予告と手当は組み合わせることもできます。たとえば10日前に予告し、20日分の解雇予告手当を支払うという方法です。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 30日前に予告 | 手当は不要 |
| 即日解雇 | 平均賃金の30日分以上を支払う |
| 組み合わせ | 予告日数+手当の日数で30日以上にする |
解雇予告手当は、即日解雇の場合は解雇の申渡しと同時に支払うのが原則です。
Q2. 平均賃金はどう計算しますか?
平均賃金は、原則として解雇を通告した日の直前の賃金締切日から遡った3か月間の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った額です。
計算例:月給30万円(残業代などなし)、3か月の総日数が92日の場合、90万円÷92日=約9,782円となり、30日分の解雇予告手当は約29万3千円です。
時給・日給の方で、働いた日数が少ない場合には、「3か月間の賃金総額÷その期間の労働日数×60%」という最低保障額があり、原則の計算と比べて高いほうを使います。ボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、賃金総額に含めません。
Q3. 解雇予告が要らない場合はありますか?
次の場合は、解雇予告や解雇予告手当が不要とされています。ただし、いずれも労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受ける必要があります。
- 天災事変などやむを得ない事由で、事業の継続が不可能になった場合
- 労働者の責めに帰すべき事由による解雇(横領など重大な非違行為)
「懲戒解雇だから予告手当は払わなくてよい」と会社が自分で判断することはできません。認定を受けずに即日解雇した場合は、予告手当の支払いが必要になります。
また、次の人には解雇予告の規定が適用されません(ただし一定期間を超えて働いた場合は適用されます)。
| 対象 | 予告が必要になる場合 |
|---|---|
| 日々雇い入れられる人 | 1か月を超えて引き続き使用された場合 |
| 2か月以内の期間を定めて使用される人 | 所定の期間を超えて引き続き使用された場合 |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される人 | 同上 |
| 試用期間中の人 | 14日を超えて引き続き使用された場合 |
試用期間中の扱いは「試用期間・本採用拒否の実務Q&A」でも解説しています。
Q4. 予告手当を払えば、解雇は有効になりますか?
なりません。解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められない場合は無効とされています(労働契約法16条)。
解雇予告手当を支払っていても、理由が不十分であれば、後から「解雇は無効」と争われる可能性があります。その場合、解雇期間中の賃金の支払いを命じられることもあります。
解雇を考える前に、注意・指導の記録、配置転換の検討、懲戒処分の段階を踏んだかどうかを確認することが大切です。懲戒処分の進め方は「懲戒処分、その進め方で大丈夫ですか?」をご覧ください。
Q5. 解雇予告手当を払わないとどうなりますか?
解雇予告のルールに違反した場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。また、裁判になった場合には、未払いの予告手当に加えて、同額の付加金の支払いを命じられることがあります。
Q6. 解雇した社員から理由を聞かれたら?
解雇の予告をした日から退職の日までの間に、本人から解雇の理由を書いた証明書を求められたら、遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条)。退職後に求められた場合も同様です。
証明書に書いた理由は、後に争いになったときの重要な資料になります。あいまいな理由や、後から付け足した理由は通りにくいと考えておきましょう。
まとめ:解雇を伝える前のチェックリスト
- □ 解雇の理由は、客観的・合理的に説明できるか
- □ 注意・指導の記録や、改善の機会を与えた経過は残っているか
- □ 就業規則の解雇事由に当てはまるか
- □ 30日前の予告、または予告手当の支払いを準備したか
- □ 平均賃金を正しく計算したか
- □ 即日解雇で予告手当を払わない場合、除外認定を受けたか
- □ 解雇理由証明書を求められたときに交付できるか
解雇は、会社にとっても本人にとっても大きな決断です。「辞めてもらう」前に、退職勧奨や配置転換など他の選択肢がないかを検討することをおすすめします。
解雇や退職勧奨の進め方でお悩みの場合は、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年10月時点の労働基準法・労働契約法および厚生労働省の公表資料に基づいています。個別の解雇の有効性は事案ごとに判断されます。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
