「試用期間中なら自由に辞めてもらえる」は誤解です|試用期間・本採用拒否の実務Q&A

「試用期間中なら自由に辞めてもらえる」は誤解です|試用期間・本採用拒否の実務Q&A

はじめに

秋は中途採用が動く時期です。新しく迎えた従業員について、「思っていた人と違った。試用期間中だから、本採用しなくても問題ないはず」とご相談をいただくことがあります。

ところが、試用期間中であっても、本採用を見送ることは法律上「解雇」にあたります。 通常の解雇より認められる範囲はやや広いとされるものの、会社が自由に判断できるわけではありません。

本記事では、試用期間についてよくいただく質問を、Q&A形式で整理します。

Q1. 試用期間中の従業員は、正社員とは別扱いですか?

A. 試用期間中でも、すでに労働契約は成立しています。

最高裁判例(三菱樹脂事件・昭和48年12月12日)では、試用期間は「解約権留保付きの労働契約」と考えられています。つまり「適格性がないと判断した場合に解約できる権利」を会社が留保しているだけで、雇用関係そのものは始まっています。

そのため、社会保険・雇用保険も、加入要件を満たしていれば入社日から加入が必要です。「本採用になってから加入」という運用は認められませんので、ご注意ください。

Q2. どのような場合に本採用を拒否できますか?

A. 客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られます。

採用時には知ることができなかった事情が判明し、引き続き雇用することが適当でないと判断されるケースが典型です。例としては次のようなものが挙げられます。

  • 無断欠勤や遅刻を繰り返し、注意しても改善しない
  • 採用の前提となった資格や経歴に、重大な詐称があった
  • 即戦力として採用した中途社員が、必要な能力を明らかに欠いている

一方、新卒や未経験者の場合は、会社が指導・教育することが前提と考えられるため、「仕事の覚えが遅い」というだけでは認められにくい傾向があります。

Q3. 本採用を拒否するとき、解雇予告は必要ですか?

A. 入社から14日を超えていれば、原則として必要です。

労働基準法では、試用期間中の従業員であっても、入社から14日を超えて働いている場合は、30日前の解雇予告または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要とされています。予告が不要なのは、入社から14日以内に限られます。

なお、14日以内であれば自由に解雇できるという意味ではありません。Q2の「合理的な理由」は、14日以内でも必要です。

Q4. 試用期間を延長することはできますか?

A. 就業規則に延長の定めがあり、合理的な理由がある場合に限り可能とされるのが一般的です。

たとえば、欠勤が多く適性を判断する期間が不足した場合などが考えられます。延長する場合は、次の点に注意しましょう。

  • 就業規則に、延長の可能性・理由・期間を定めておく
  • 延長の理由と期間を、本人に書面で伝える
  • 何度も延長を繰り返さない(本人の地位を不安定にし、トラブルの原因になります)

Q5. 試用期間中は給与を低くしてもよいですか?

A. 労働契約で合意していれば可能ですが、最低賃金を下回ることはできません。

試用期間中の賃金を本採用後より低く設定すること自体は、労働条件通知書などで明示し、合意していれば一般的に認められています。ただし、最低賃金の減額特例を受けるには都道府県労働局長の許可が必要で、単に「試用期間だから」という理由で最低賃金を下回ることはできません。

2026年10月からは各地で最低賃金が改定されます(千葉県は1,195円)。試用期間中の給与設定もあわせて確認しておきましょう。

Q6. 「まず3か月の有期契約で様子を見る」のは問題ありませんか?

A. 実質が試用期間であれば、期間満了での終了が認められないことがあります。

最高裁判例(神戸弘陵学園事件・平成2年6月5日)では、労働者の適性を評価・判断するための有期契約は、原則として試用期間とみなされると判断されています。この場合、契約期間の満了をもって自由に終了させられるとは限りません。「有期契約にしておけば安心」とは言えない点に注意が必要です。

まとめ:試用期間の運用チェックリスト

  • □ 就業規則に、試用期間の長さ・延長・本採用拒否の定めがあるか
  • □ 労働条件通知書に、試用期間の有無と期間を明示しているか
  • □ 試用期間中も、社会保険・雇用保険に入社日から加入しているか
  • □ 評価の基準を本人に伝え、面談と指導の記録を残しているか
  • □ 14日を超えた場合の解雇予告(または予告手当)を理解しているか
  • □ 試用期間中の給与が、改定後の最低賃金を下回っていないか

本採用拒否のトラブルでは、「指導したのに改善しなかった」ことを示す記録があるかどうかが大きな分かれ目になります。問題に気づいたら早めに面談し、記録を残すことを心がけましょう。

退職をめぐるトラブルについては「中小企業の退職トラブルQ&A」、最低賃金の改定については「千葉県の最低賃金が1,195円に」もあわせてご覧ください。

試用期間の規定の見直しや、本採用の判断に迷われたときは、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。


※本記事は2026年9月19日時点の法令・判例に基づいています。本採用拒否の有効性は個別の事情により判断が異なりますので、具体的な対応にあたっては専門家にご相談ください。

社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳

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