
はじめに
パートや契約社員の契約を「4月1日〜翌年3月31日」の1年ごとに更新している会社は多いと思います。年度末の更新に向けて、年明けから本人と更新の話を始めるなら、そろそろ準備に取りかかりたい時期です。
更新のときに必ず確認したいのが、「無期転換ルール」です。通算5年を超える人がいるのに何も対応していない、あるいは「更新は5年まで」と後から決めようとしている——こうしたケースは、トラブルになりやすいポイントです。
本記事では、無期転換ルールの基本と、2024年4月から必要になった明示、更新上限を設けるときの注意点を整理します。
無期転換ルールとは
無期転換ルールとは、同じ会社との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者が申し込めば、期間の定めのない契約(無期契約)に転換されるというものです(労働契約法18条)。
- 会社は申込みを断ることができません。 申込みがあった時点で無期契約が成立したとみなされます
- 実際に無期契約に切り替わるのは、申込みをした時の契約期間が満了した翌日からです
- 1年契約の場合、5回目の更新後の契約期間中(6年目)に申込みの権利が発生するのが一般的です
通算期間がリセットされる「クーリング」
契約と契約の間に、原則として6か月以上の空白期間がある場合は、それ以前の期間は通算されません(直前の通算期間が1年未満の場合は、より短い期間で足ります)。ただし、無期転換を避ける目的で空白期間を設けることは、法の趣旨に照らして望ましくないとされています。
2024年4月から必要になった明示
2024年4月の労働基準法施行規則の改正で、有期契約の締結・更新時の明示事項が追加されました。
| 明示するタイミング | 明示すること |
|---|---|
| すべての有期契約の締結・更新時 | 更新上限の有無と内容(通算期間または更新回数) |
| 無期転換の申込権が発生する更新のたび | 無期転換を申し込めること |
| 同上 | 無期転換後の労働条件 |
無期転換後の労働条件を明示するときは、正社員などとのバランスを考慮した事項について説明するよう努めることも求められています。
「申込権が発生する更新のたび」という点がポイントです。一度伝えれば終わりではなく、本人が申し込まずに更新を続ける場合は、その後の更新のたびに明示が必要です。
更新上限を設けるときの注意点
「更新は通算5年まで」といった上限を設けること自体は、直ちに違法となるわけではありません。ただし、次の点には注意が必要です。
① 後から設ける・短くする場合は、理由の説明が必要
契約の途中で更新上限を新たに設ける、または短くする場合は、あらかじめ(変更前に)その理由を本人に説明することが求められています。
② 上限があっても雇止めが認められないことがある
長年更新を繰り返してきた人や、更新を期待させる言動があった人については、上限に達したことだけを理由とする雇止めが認められない可能性があります(労働契約法19条)。上限は、最初の契約のときから明示しておくのが基本です。
③ 雇止めをする場合は30日前に予告
3回以上更新している人、または通算1年を超えて継続勤務している人を更新しない場合は、少なくとも契約満了の30日前までに予告する必要があります。本人から求められたら、雇止めの理由を書面で示すことも必要です。
無期転換後の労働条件はどうなる?
無期転換後の労働条件は、就業規則などで別段の定めがない限り、直前の有期契約と同じ(契約期間だけが無期になる)です。必ずしも正社員と同じ待遇にする必要はありませんが、次の点を就業規則で整えておくのが一般的です。
- 無期転換社員に適用する就業規則(パート就業規則か、別の規程か)
- 定年の定め(定めがないと、事実上の終身雇用になりかねません)
- 配置転換・職務の範囲
まとめ:年度末の更新前チェックリスト
- □ 有期契約者ごとに、通算契約期間を把握しているか
- □ 通算5年を超える人(申込権が発生する人)を洗い出したか
- □ 該当者の更新時の通知書に、無期転換の申込みと転換後の条件を記載したか
- □ すべての有期契約で、更新上限の有無と内容を明示しているか
- □ 更新上限を新設・短縮する場合、事前に理由を説明する予定を立てたか
- □ 雇止めの予定がある人に、30日前までに予告できるスケジュールか
- □ 無期転換社員の就業規則(定年など)を整えているか
無期転換は、うまく運用すれば、経験を積んだ人に長く働いてもらうための仕組みにもなります。通知書の書き方は「パート・有期の労働条件通知書、実際にどう書く?」もあわせてご覧ください。
有期契約の更新管理や就業規則の整備でお困りのことがございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年10月時点の労働契約法・労働基準法施行規則および厚生労働省の公表資料に基づいています。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
