
はじめに
10月も半ばになると、年末調整の申告書を配付し、回収に向けて動き出す時期です。年末調整でいちばん時間がかかるのは、計算ではなく「回収した申告書の点検と差し戻し」ではないでしょうか。
令和8年分は、基礎控除の引上げや「源泉控除対象親族」の新設などで、申告書の書き方が例年と変わる年です。去年と同じ感覚で記入されると、差し戻しが増えやすくなります。
本記事では、回収した申告書のどこを見ればよいかと、差し戻しを減らすための段取りを整理します。今年の改正内容そのものは「年末調整の準備は10月から|今年は様式が変わります」で解説していますので、あわせてご覧ください。
年末調整で回収する主な申告書
| 申告書 | 主な確認ポイント |
|---|---|
| 令和8年分 扶養控除等(異動)申告書 | 年初に提出済みのもの。年の途中の家族の異動が反映されているか |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 特定親族特別控除申告書 | 本人の所得見込み、配偶者・19歳〜22歳の子の所得見込み |
| 保険料控除申告書 | 控除証明書の添付、23歳未満の扶養親族の有無 |
| 住宅借入金等特別控除申告書 | 2年目以降の方のみ。金融機関の残高証明書の添付 |
| 令和9年分 扶養控除等申告書 | 来年分。年末調整とあわせて回収するのが一般的 |
回収したら確認したい5つのポイント
① 扶養親族の「所得の見込み」が新しい基準で書かれているか
令和8年分から、扶養親族や同一生計配偶者の所得要件は合計所得金額62万円以下(給与収入のみなら136万円以下)に引き上げられました。
「去年までは対象外だった家族が、今年は対象になる」ケースがあります。逆に、古い基準のまま「該当なし」と書いている方もいますので、家族にパート収入がある方は特に注意して見てください。
② 19歳〜22歳の子の欄が空欄になっていないか
大学生などのお子さんがアルバイトをしていて扶養親族の要件を超える場合でも、一定の範囲内であれば特定親族特別控除の対象になる可能性があります。この控除は、毎月の源泉徴収では一部しか考慮されず、年末調整で申告書を出してもらって初めて反映されるものがあります。
該当しそうな従業員に、「お子さんのアルバイト収入の見込み」を書いてもらうよう、配付時に一言添えておくと漏れが減ります。
③ 保険料控除の証明書が添付されているか
生命保険料・地震保険料・小規模企業共済等掛金などは、控除証明書の添付が必要です(年金から天引きされる社会保険料などは添付不要のものもあります)。今年は、23歳未満の扶養親族がいる方の一般生命保険料控除の上限が引き上げられており、申告書に記載欄が追加されています。
④ 年の途中で入社した方の前職分がそろっているか
中途入社の方は、前の勤務先の源泉徴収票がないと年末調整ができません。前職から届いていない場合は、本人から請求してもらう必要があります。11月中に確認しておくと安心です。
⑤ 本人の所得が多すぎないか
基礎控除の額は、本人の合計所得金額によって変わります。給与以外の所得が多い方は、控除額が小さくなる場合があります。また、その年の給与の収入金額が2,000万円を超える方は、年末調整の対象外です。副業収入がある方や、不動産収入がある方は、基礎控除申告書の記載をよく確認してください。
差し戻しを減らす3つのコツ
- 記入例を社内向けに1枚つくる:国税庁の記入例はていねいですが、情報量が多いため、自社の従業員に関係する欄だけに絞った1枚があると効果的です
- 回収期限を2段階にする:「一次締切」で回収し、「最終締切」までを差し戻し・修正の期間にあてると、12月に慌てずに済みます
- 年末調整ソフト・電子申告の活用を検討する:控除証明書を電子データで受け取れば、転記ミスや紛失が減ります
まとめ:回収時のチェックリスト
- □ 扶養親族の所得見込みが、令和8年分の基準(62万円以下)で判定されているか
- □ 19歳〜22歳の子のアルバイト収入の見込みを確認したか
- □ 保険料控除の証明書が添付されているか
- □ 中途入社者の前職の源泉徴収票がそろっているか
- □ 副業・不動産など給与以外の所得がある方の記載を確認したか
- □ 令和9年分の扶養控除等申告書もあわせて回収したか
- □ 一次締切と最終締切を設定し、差し戻しの時間を確保したか
年末調整の申告書は、「回収してから考える」より「配る前に段取りを決める」ほうが、ずっと楽になります。
なお、税額の計算や個別の控除の可否は税理士の業務領域です。判断に迷われる点は、顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。当事務所では、申告書の回収フローづくりや従業員向けの案内文の作成など、実務面のお手伝いをしております。お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年10月時点で国税庁が公表している令和8年分の年末調整の資料に基づいています。金額はいずれも給与収入のみの場合の目安です。税額の個別のご相談は、税理士または所轄の税務署へお問い合わせください。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
