
はじめに
11月に入ると、忘年会の幹事決めや日程調整が始まる会社も多いのではないでしょうか。久しぶりに大人数で集まる会社もあれば、「若手が参加したがらない」と悩んでいる会社もあるかもしれません。
忘年会は楽しい行事である一方、「参加は業務なのか」「帰り道の事故は労災になるのか」「お酒の席でのハラスメントは会社の責任か」など、労務の面で気をつけたい点があります。
本記事では、忘年会を開く前に会社として押さえておきたいポイントを整理します。
忘年会への参加は「労働時間」になる?
労働時間かどうかは、会社の指揮命令下に置かれているかどうかで判断するのが一般的です。
| 状況 | 労働時間にあたるか |
|---|---|
| 自由参加で、不参加でも不利益がない | あたらないのが一般的 |
| 「全員参加」と業務として指示している | あたる可能性がある |
| 不参加だと評価に響く・事実上断れない | あたる可能性がある |
| 幹事として準備・進行を業務として命じた | あたる可能性がある |
労働時間にあたる場合は、所定労働時間を超えた分について時間外労働の割増賃金が必要になることがあります。
「強制参加にはしていない」つもりでも、上司が「来ないと困る」と繰り返し言っていた、参加しない人だけ別の仕事を割り当てたといった事情があれば、事実上の強制と見られることもあります。参加は自由であることを、はっきり伝えることが大切です。
帰り道の事故は労災になる?
忘年会の帰りに転んでけがをした場合、通勤災害や業務災害として労災保険の対象になるかどうかは、その忘年会が業務といえるかどうかで変わります。
- 自由参加の親睦会であれば、業務とは認められず、帰り道の事故も労災の対象外となるのが一般的です
- 参加が業務として指示され、会社の運営として行われていた場合には、業務の一環として労災の対象となる可能性があります
ただし、業務と認められる場合でも、二次会やその後の飲み歩きなど、私的な行為に移ったあとの事故は対象外と考えられています。
飲酒運転は絶対に防ぐ
会社の行事のあとに従業員が飲酒運転をした場合、運転者だけでなく、車両を提供した人や酒を提供した人、同乗者も処罰の対象になりえます。社用車を使う会社では、鍵の管理や代行・公共交通機関の利用の呼びかけなど、事前の対策を徹底しましょう。
なお、一定台数以上の社用車を使う事業所では、運転前後のアルコール検知器による酒気帯び確認が義務になっています。翌朝の運転にも注意が必要です。
宴席でのハラスメントは会社の責任に
ハラスメントが起こる「職場」は、通常働いている場所に限られません。厚生労働省の通達では、勤務時間外の宴会などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」にあたるとされています。参加者の範囲や参加が強制かどうかなどを考慮して判断されるため、会社の忘年会は該当しうると考えておくのが安全です。
忘年会で起きやすいのは、次のようなケースです。
- お酒を無理に勧める、一気飲みをさせる(いわゆるアルハラ)
- 容姿や交際関係についての発言、体に触れる行為
- 若手社員に余興を強要する
- 参加しなかった人を、後日責める・からかう
会社には、相談を受けたら事実確認をして適切に対応する義務があります。宴席だから、お酒の席だからといって見過ごすことはできません。事前に「お酒の無理強いはしない」「ハラスメントは宴席でも同じ」と全員に伝えておくのが効果的です。
まとめ:忘年会の前のチェックリスト
- □ 参加は自由であり、不参加でも不利益がないことを伝えたか
- □ 業務として参加を求める場合、労働時間の扱いを決めたか
- □ 幹事の準備を勤務時間内に行うか、業務として扱うかを決めたか
- □ 飲酒運転をさせないための対策(鍵の管理・帰宅手段)を決めたか
- □ 翌朝の運転業務がある人の酒気帯び確認を徹底するか
- □ お酒の無理強いや余興の強要をしないよう周知したか
- □ ハラスメントの相談窓口を改めて案内したか
忘年会は、日ごろの感謝を伝えるよい機会です。だからこそ、参加した人もしなかった人も気持ちよく年を越せるように、ルールを整えておきたいところです。
ハラスメント対策や社内行事のルールづくりでお困りのことがございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年10月時点の労働基準法・労災保険の取扱い・ハラスメント防止指針などに基づいています。個別の事故が労災にあたるかどうかは、労働基準監督署が事案ごとに判断します。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
