
はじめに
時間外労働や休日労働をさせるには、36協定(時間外・休日労働に関する協定届)を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定の有効期間は1年としている会社が多く、1月1日を起算日にしている会社では、12月中に新しい協定の届出が必要です。毎年のことなので「去年の協定書をコピーして日付だけ変える」という会社も少なくありませんが、その去年の内容に不備があることもあります。
本記事では、36協定の基本と、更新のときに見直したいポイントを整理します。
36協定の基本ルール
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 時間外労働(原則) | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項を設けた場合の時間外労働 | 年720時間以内 |
| 時間外労働+休日労働(特別条項) | 単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内 |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6回まで |
※1年単位の変形労働時間制(対象期間3か月超)の場合、原則の上限は月42時間・年320時間です。
36協定は事業場(支店・工場など)ごとに結び、届け出るのが原則です。また、協定の有効期間が始まる前に届け出なければ、その間の時間外労働は違法になります。
なお、2026年9月から労働基準監督署の指導の考え方が見直されています。詳しくは「労基署の残業指導が変わりました」をご覧ください。
届出で差し戻されやすい6つのポイント
① 過半数代表者の選び方
36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する人(過半数代表者)と結びます。過半数代表者は、次の条件を満たす必要があります。
- 管理監督者でないこと
- 36協定を結ぶ人を選ぶと明らかにしたうえで、投票・挙手などの民主的な方法で選ばれていること
- 会社の意向で選ばれた人でないこと
「社長が指名した」「親睦会の代表がそのまま署名した」といった選び方では、協定そのものが無効になるおそれがあります。
② 協定届のチェックボックス
現在の様式には、「過半数代表者が適正に選ばれていること」などを確認するチェックボックスがあります。ここにチェックがないと、受理されないことがあります。
③ 業務の種類が大まかすぎる
「業務の種類」欄は、「製造業務」「事務」などと一括りにせず、業務の区分を細分化して書くことが求められています。
④ 特別条項の「臨時的な理由」があいまい
特別条項を使う理由は、「業務の都合上必要なとき」「業務繁忙なとき」といった抽象的な書き方では不十分とされています。「決算業務」「大規模なクレームへの対応」など、具体的に書きましょう。
⑤ 健康・福祉確保措置の記載漏れ
特別条項を設ける場合は、限度時間を超えて働く人への健康・福祉確保措置(医師による面接指導、勤務間インターバル、代償休日など)を定める必要があります。実際に措置を実施し、記録を残すことも大切です。
⑥ 限度時間を超えたときの割増率
特別条項では、月45時間を超えた時間外労働の割増賃金率を定めます。法定の25%を超える率とするよう努めることとされています。また、月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増が必要です(2023年4月から中小企業にも適用)。
届出の方法
36協定届は、e-Govによる電子申請でも届け出ることができます。協定届に押印・署名は不要ですが、協定届を協定書として兼ねる場合は、労使双方の記名押印または署名が必要です。
複数の事業場がある会社では、内容が同じなどの条件を満たせば、本社でまとめて届け出る(本社一括届出)こともできます。
まとめ:更新前のチェックリスト
- □ 協定の有効期間が始まる前に届け出るスケジュールになっているか
- □ 過半数代表者を、目的を示して民主的な方法で選んだか
- □ 協定届のチェックボックスにチェックしたか
- □ 業務の種類を細分化して書いているか
- □ 特別条項の理由を具体的に書いているか
- □ 健康・福祉確保措置を定め、実施した記録を残しているか
- □ 去年の実績で、上限を超えた月がなかったか確認したか
36協定は、会社と従業員が残業のルールを確認しあう、年に一度の機会でもあります。去年の実績を振り返り、必要な時間数を見直すきっかけにしてください。
36協定の作成・届出や、労働時間の管理でお困りのことがございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年10月時点の労働基準法および厚生労働省の公表資料に基づいています。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
