
はじめに
4月1日を基準日として年次有給休暇を付与している会社では、10月が「年5日取得義務」の折り返し地点にあたります。
年5日の取得義務は2019年4月に始まった制度で、すでに定着したとお考えの会社も多いかもしれません。しかし実際には、年度末の2月・3月に慌てて未取得者を洗い出し、業務の繁忙期と重なって取得させられない——という相談が毎年のように寄せられます。
10月時点で進捗を確認しておけば、まだ半年の余裕があります。本記事では、年度後半に向けた点検のポイントを整理してお伝えします。
そもそも誰が対象なのか
義務の対象となるのは、年次有給休暇が10日以上付与される労働者です。ここを狭く捉えている会社が少なくありません。
対象に含まれるのは次の方々です。
- 正社員
- 管理監督者(残業代の対象外であっても、年休の義務からは外れません)
- パート・アルバイト(週4日勤務で勤続3年6か月以上など、比例付与でも10日以上になれば対象)
- 有期契約の労働者
「管理職だから」「パートだから」という理由で対象外になることはありません。まずは付与日数が10日以上の方をすべて洗い出すところから始めてください。
10月時点で確認したい進捗の目安
基準日から1年以内に5日を取得させる必要がありますので、単純計算では半年経過時点で2.5日が目安になります。
| 4月1日基準日の場合 | 望ましい取得日数の目安 |
|---|---|
| 10月時点 | 2〜3日 |
| 12月時点 | 3〜4日 |
| 1月時点 | 4日以上 |
10月の時点で取得が0日または1日の方がいれば、要注意とお考えください。年末年始やお盆などの一斉休暇を年休に充てている会社では自然に日数が積み上がりますが、そうした運用がない会社では、意識的に取得を促す必要があります。
なお、労働者本人が自ら取得した日数と、計画的付与で取得した日数は、5日から差し引くことができます。会社が時季指定をしなければならないのは、あくまで不足分だけです。
時季指定を行うときの注意点
就業規則への記載が必要です
会社から取得日を指定する「時季指定」を行う場合、就業規則に「対象となる労働者の範囲」と「時季指定の方法」を定めておく必要があります。
この記載がないまま時季指定を行うと、就業規則の記載不備として指摘を受ける可能性があります。まだ規定していない場合は、年度後半に入る前に整備しておきたいところです。
本人の意見を聴き、尊重する
時季指定にあたっては、あらかじめ労働者に意見を聴き、その意見をできる限り尊重することとされています。一方的に日付を割り当てるのではなく、「この月のどこかで1日取ってください」と候補を出してもらう進め方が現実的です。
半日・時間単位の扱い
- 半日単位の取得は、0.5日として5日にカウントできます
- 時間単位の年休は、5日の日数にはカウントできません
時間単位年休を導入している会社では、「細かく取っているから足りているはず」と思い込みやすい部分です。集計の際はご注意ください。
年次有給休暇管理簿は作成していますか
年5日の取得義務とあわせて、年次有給休暇管理簿の作成が義務づけられています。記載すべき事項は「時季」「日数」「基準日」の3点で、3年間の保存が必要です。
様式は自由で、労働者名簿や賃金台帳と一体で管理しても差し支えありません。実務では、基準日・付与日数・取得日・残日数を1枚で見渡せる一覧表にしておくと、進捗確認がそのまま管理簿を兼ねる形になり効率的です。
給与計算ソフトや勤怠システムで年休を管理している場合は、管理簿として出力できる機能が備わっていることが多いので、一度ご確認ください。
違反した場合の罰則
年5日を取得させなかった場合、労働基準法第39条第7項違反として、労働者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります(同法第120条)。
注意していただきたいのは、「1人につき」という点です。対象者が10人いて全員が未達であれば、その分だけ違反件数が積み上がる建て付けになっています。
実務上、いきなり罰則が適用されることは稀で、まずは労働基準監督署からの是正指導が入るのが一般的です。とはいえ、指導を受けてからの対応は負担が大きくなりますので、年度内に計画的に進めておくことをおすすめします。
まとめ:10月にやっておきたいこと
- □ 年10日以上付与されている労働者を全員リストアップしたか
- □ 管理監督者・パート・有期契約者も対象に含めたか
- □ 10月時点の取得日数を一人ずつ確認したか
- □ 取得が0〜1日の従業員を特定したか
- □ 時間単位年休を5日にカウントしていないか確認したか
- □ 年次有給休暇管理簿を作成・保存しているか
- □ 就業規則に時季指定の定めがあるか確認したか
- □ 不足者への声かけ・時季指定の進め方を決めたか
年5日の取得義務は、年度末に近づくほど選択肢が狭くなる性質の問題です。10月の時点で不足者を把握しておけば、繁忙期を避けて計画を立てる余地が残っています。
年次有給休暇管理簿の様式づくりや、就業規則への時季指定の規定の追加についてご不明な点がございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
規程全体の点検については「就業規則、最後に見直したのはいつですか?」もあわせてご覧ください。
※本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいています。最新の情報は厚生労働省・各都道府県労働局の発表をご確認ください。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
