
はじめに
2026年10月1日は、最低賃金の改定やカスハラ対策の義務化など、制度変更が集中する日です。その陰で見落とされやすいのが、パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と告示の改正です。
パート・アルバイトや契約社員を1人でも雇っている会社であれば、企業規模を問わず対象になります。とくに、10月以降に使う労働条件通知書のひな形に1項目を追加する必要があり、対応しないまま雇い入れると過料の対象にもなり得ます。
本記事では、今回の改正で何が変わるのか、9月中に何を準備しておけばよいのかを整理します。
今回の改正は3本立てです
厚生労働省のリーフレットでは、改正内容が次の3つに整理されています。
- 雇い入れ時の労働条件明示事項の追加(パート・有期法施行規則)
- 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正(告示)
- 待遇差を説明する際の方法の明確化(雇用管理指針)
このうち、会社の書類を必ず変えなければならないのが1つ目です。順に見ていきます。
① 労働条件通知書に「説明を求めることができる旨」を追加
パート・有期雇用労働者を雇い入れたときは、労働基準法で定められた事項に加えて、次の事項を文書などで明示することが義務づけられています。
| 区分 | 明示事項 |
|---|---|
| これまで | 昇給の有無/退職手当の有無/賞与の有無/相談窓口 |
| 10月1日から追加 | 待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨 |
違反した場合は10万円以下の過料の対象とされています。
記載のしかた
厚生労働省が示している記載例は、次のような形です。
「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。部署名/担当者職氏名(連絡先)」
すでに「相談窓口」の欄を設けている会社であれば、その近くに一文を足す形が作りやすいでしょう。厚生労働省のモデル労働条件通知書も改正後の様式が公開されていますので、自社のひな形と見比べておくことをおすすめします。
対象になる人
「パートタイム・有期雇用労働者」には、正社員より週の所定労働時間が短いパート・アルバイトのほか、期間の定めのある契約社員や、定年後に有期契約で再雇用した嘱託社員も含まれます。有期契約を更新する際にも労働条件を明示し直すのが一般的ですので、10月以降に更新を迎える方の通知書にも忘れずに反映してください。
明示の方法は文書の交付が原則で、本人が希望した場合はFAXや電子メールなどでも差し支えないとされています。
② 同一労働同一賃金ガイドラインに9項目が追加・充実
同一労働同一賃金ガイドラインは、正社員とパート・有期雇用労働者の間で「どのような待遇差が不合理か」を具体例で示したものです。今回、次の項目が新たに加わり、または記載が充実しました。
| 新規追加 | 記載の充実 |
|---|---|
| 退職手当/無事故手当/家族手当/住宅手当/夏季冬季休暇/褒賞 | 賞与/病気休職/福利厚生施設 |
リーフレットでとくに取り上げられているのは、次の3点です。
- 賞与・退職手当:労務の対価の後払いや功労報償といった目的が当てはまるのに、パート・有期雇用労働者に対して、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた支給をしない場合は、不合理と認められる可能性があります
- 住宅手当:「転居を伴う配置の変更の有無」に応じて支給している場合、正社員と同じように転居を伴う異動があるパート・有期雇用労働者には、同じ住宅手当を支給する必要があります
- 夏季冬季休暇:パート・有期雇用労働者にも、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与する必要があります
「正社員だから支給する」「契約社員だから対象外」という雇用形態だけを理由にした線引きは、説明が難しくなります。手当ごとに何のために支給しているのかを言葉にしておくことが、点検の出発点です。
③ 説明を求められたときの対応方法
パート・有期雇用労働者から求めがあった場合、会社は待遇差の内容と理由などを説明しなければなりません。今回の指針改正で、その方法が次のように示されました。
- 「資料を活用し、口頭で説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した、わかりやすい資料を交付する方法」のいずれかで説明する
- 口頭で説明する場合も、使った資料を交付することが望ましい
- 資料の交付が難しい場合でも、後から求めがあれば閲覧させるなどの工夫に努める
なお、説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています。通知書に一文を足すだけでなく、実際に質問を受けたときに窓口担当者が答えられる状態にしておくことが大切です。
まとめ:9月中の準備チェックリスト
- □ パート・有期用の労働条件通知書(雇用契約書)のひな形に「説明を求めることができる旨」を追加したか
- □ 説明を受け付ける窓口(部署名・担当者・連絡先)を決めたか
- □ 10月以降に契約更新を迎える方の通知書にも反映する段取りをつけたか
- □ 定年後再雇用の嘱託社員の通知書も対象に含めたか
- □ 手当・休暇ごとに「支給目的」と「正社員との差の理由」を整理したか
- □ 住宅手当・家族手当・夏季冬季休暇・退職手当の扱いをガイドラインと照らし合わせたか
- □ 説明に使う資料(待遇の比較表など)を用意したか
今回の改正は、通知書の修正そのものは小さな作業ですが、「なぜこの差があるのか」を説明できるかという本質的な問いを会社に投げかけています。手当や休暇の設計を見直すなら、就業規則・賃金規程とあわせて整理するのが効率的です。
10月1日から同時に始まる他の制度については「【10月1日まであと2週間】4つの制度変更の総点検」、再雇用者の待遇については「定年後再雇用の賃金、その決め方で大丈夫ですか」もあわせてご覧ください。
通知書のひな形の見直しや、待遇差の点検についてご不安な点がございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年9月13日時点の公開情報(厚生労働省リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」等)に基づいています。個別の待遇差が不合理にあたるかどうかは、職務の内容や配置の変更の範囲など個別の事情により判断が異なります。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
