
はじめに
2026年10月1日、本日です。予告してまいりました4つの制度変更が、今日から実際に動き出しました。
準備を終えられた会社も、まだ途中という会社もあるでしょう。本記事では、「今日から実務が具体的にどう変わるのか」、そして「間に合わなかった場合に何から手をつけるか」を整理します。
事前の総点検については「10月1日までの総点検」でご紹介しました。本記事はその「施行後版」です。
① 最低賃金 ── 今日働いた分から1,195円です
千葉県の最低賃金は、本日から時間額1,195円(55円の引上げ)になりました。
ここで毎年誤解が生じるのが、いつの分から適用されるのかという点です。
| 判定の基準 | 内容 |
|---|---|
| ○ 正しい | 働いた日が10月1日以降かどうか |
| × 誤り | 給与の支給日が10月1日以降かどうか |
たとえば「9月16日〜10月15日が計算期間、10月25日支給」という給与の場合、9月16日〜9月30日は旧額(1,140円)、10月1日〜10月15日は新額(1,195円)で計算します。ひとつの給与計算期間の中で単価が切り替わりますので、今月の給与計算がいちばんややこしくなります。
日給制・月給制の場合も、時間額に換算して1,195円を下回っていないかの確認が必要です。特に固定残業代を採用している会社は、基本給部分だけで判定する点にご注意ください。詳しくは「固定残業代の会社は要注意」をご覧ください。
② カスタマーハラスメント対策 ── 本日から事業主の義務です
改正労働施策総合推進法に基づき、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、本日から事業主の義務となりました。中小企業の猶予期間はありません。
指針が求めている措置は、大きく次の4つに整理できます。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知 | カスハラには毅然と対応し、労働者を守る方針を定め、従業員に周知する |
| 相談体制の整備 | 相談窓口を設け、担当者を決め、従業員に周知する |
| 事後の迅速・適切な対応 | 事実関係の確認、被害を受けた労働者への配慮(担当交代・配置転換・メンタル面の支援など) |
| 再発防止・抑止 | 接客ルールの見直し、方針の再周知など |
まだ何も着手していない会社は、「方針を1枚の文書にして、朝礼や社内掲示で周知する」ところから始めてください。 完璧なマニュアルを作ることより、方針が示されていることのほうが先です。
あわせて、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も本日から義務化されています。採用面接の場面も対象に含まれますので、面接担当者への注意喚起をお願いいたします。
③ 社会保険の適用拡大 ── 賃金要件がなくなりました
短時間労働者の加入要件のうち、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)という賃金要件が撤廃されました。いわゆる「106万円の壁」の撤廃です。
今日以降、従業員51人以上の会社では、週の所定労働時間が20時間以上であることが判定の主軸になります。
対象となる方がいる場合は、資格取得届を10月1日付で、原則5日以内に提出する必要があります。本日を起算日とすると、手続きの期限はすぐにやってきます。まだ届出をしていない会社は、本日中に対象者リストを確定させてください。
本人への説明がお済みでない場合は、天引きが始まる前に説明の場を持つことをおすすめします。説明のしかたは「新たに社会保険に入るパートさんへの説明のしかた」でご紹介しています。
④ パート・有期雇用のルール ── 今日以降の雇入れ・更新から
パートタイム・有期雇用労働法の改正により、労働条件の明示事項に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」が追加されました。
適用されるのは、本日以降に雇い入れる方からです。有期契約の更新も新たな雇い入れとして扱われるのが一般的ですので、今月・来月に更新を迎える方の通知書にも反映が必要です。
同時に、同一労働同一賃金ガイドラインも改正されました。家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇について、正社員との同一の取扱いが求められる範囲が明確化されています。文例つきの実務対応は「労働条件通知書、実際にどう書く?」をご覧ください。
間に合わなかった会社へ ── 優先順位のつけ方
すべてが同時に始まったため、手が回らなかった会社もあると思います。放置したときのリスクが大きい順に並べると、次のようになります。
- 最低賃金 ── 下回ると罰則(50万円以下の罰金)の対象。差額の支払いも必要。最優先で確認してください
- 社会保険の資格取得届 ── 提出が遅れると遡っての保険料徴収が発生し、本人の負担が一度に重くなります
- カスハラの方針明確化 ── 1枚の文書と周知で、まず形を整えられます
- 労働条件通知書のひな形 ── 次の雇入れ・更新までに直せば実害は出にくい項目です
①と②は金銭が絡むため、後回しにするほど負担が膨らみます。③と④は、着手の記録が残っていることが重要です。
まとめ:本日から1週間以内にやること
- □ 10月1日以降の勤務分について、時間単価1,195円以上になっているか確認したか
- □ 今月の給与計算で、9月分と10月分の単価を分けて計算する段取りができているか
- □ カスハラ対応方針を文書化し、従業員に周知したか
- □ 相談窓口の担当者を決め、連絡先を周知したか
- □ 社会保険の資格取得届を10月1日付で提出したか(原則5日以内)
- □ 対象者本人に、保険料の負担額を説明したか
- □ パート・有期用の労働条件通知書のひな形を修正したか
制度変更の日は、やり残しに気づく日でもあります。今日の時点で完璧である必要はありません。何が終わっていないかを把握し、順番をつけて手を打っていけば十分です。
4つの制度変更への対応でお困りのことがございましたら、詳細はお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は2026年10月1日時点の法令・指針および公表されている情報に基づいています。個別の判断については専門家にご相談ください。
社労士事務所LDパートナーズ(千葉市)
代表 社会保険労務士 大城里佳
